江戸時代後期、花菖蒲の発展に大きな功績を残したのは旗本、松平左金吾定朝(まつだいらさきんごさだとも)です。
自らを「菖翁」と名乗り、60年にわたって花菖蒲の改良と新品種の作出に情熱を傾けました。
菖翁により作出された花を「菖翁花」といいます。120種の品種が作出されたようですが、現在は17種前後が現存するのみとなっています。
戦前の品種は江戸古花と呼ばれ、今でも明治神宮御苑を始め各地の花菖蒲園や個人で大切に保存されています。
堀切菖蒲園では、品種の保存と江戸情緒の創出に役立てるため、現在も菖翁花の名を引き継ぐ、10種余りの栽培管理をおこなっています。
【基本データ】
科属:アヤメ科アヤメ属
学名:Iris ensata
草丈:80~120cm
園芸分類:多年草
花期:5~7月
花色:紫、紅紫、藤、ピンク、白色など
花の大きさ:10~20cm
草姿:立性
原産地:日本
利用:花壇、鉢植え、切り花
花言葉:信じる、和解、吉報、優しさ、心意気、優しい心、優雅
誕生花:5月5日、5月8日、5月20日、5月31日
撮影:2019.06.08 堀切菖蒲園、水元公園、足立区しょうぶ沼公園
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品 種 名 | 作出者 | 作出年代 | 花期 | 花 容 |
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宇宙・うちゅう | 松平菖翁 | 1848頃 | 中 | 重八重咲き中輪。花色:澄んだ浅黄に白筋 |
王昭君 おうしょうくん |
松平菖翁 | 江戸末期 安政3 1856年 | 中 | 六英中輪。花径:16cm、花色:濃いルリ紺 歴史的名花。名は中国前漢時代の元帝の後宮から匈奴に嫁がされた王昭君の終焉地が青い城を意味することから、美しい青の本種を孤高の美女になぞらえたもの。 |
雲衣装 くもいしょう |
松平菖翁 | 江戸末期 | 中 | 花容:六英中輪、濃い藤色 |
霓裳羽衣 げいしょうい |
松平菖翁 | 江戸末期 1945年以前 | 中 | 花径:14cm、花色:濃紅紫色に白筋入、半八重~八重中輪 宇宙に次ぐ菖翁自らのお気に入り品種。 |
五湖の遊 ごこのあそびく |
松平菖翁 | 江戸末期 1949年以前 | 中 | 花容:六英中輪、花径:14cm 花色:青紫地に白筋の入る平咲きから受け咲きの中輪花。芯は白く先端に青紫がかかり、よくさくと何本も立つ。 |
蛇籠の波 じゃかごのなみ |
松平菖翁 | 花容:半八重~八重の中輪花 花径:14cm 花色:白地に紫の細い脈色。遠くから見ると花の群れは、波に洗われる蛇竜を連想させます。菖翁の作出のものとは別種とも考えられています。 |
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仙女の洞 せんにょのほら |
松平菖翁 | 江戸後期 1949年以前 | 中 | 花容:六英中輪花、花径:14cm 花色:濃い紅紫に淡色の細かな流れ絞りの平咲き中輪花。花弁は丸くうねり、江戸後期に好まれた粋な花形の品種です。 |
立田川 たつたがわ |
松平菖翁 | 江戸後期 1952年以前 | 中 | 花容:三英中輪花、花径:16cm 花色:白地に紅紫覆輪の中輪花。草丈は70cm前後。江戸末期に菖翁が肥後に譲り、のち熊本花菖蒲の中心的な育種親ともなりました。 |
九十九髪 つくもがみ |
松平菖翁 | 1856以前 | 中 | 花容:六英平咲き中輪 花色:白地に細い紫脈 |
鶴の毛衣 つるのけごろも |
松平菖翁 | 江戸末期 安政3 1856年以前 | 中 | 花容:三英の中輪花、花径:16cm 花色:白色 独特の先端がやや尖ったような花弁が特徴で、鉾も活きよくピンと立ち、高い品格を備えた美しい花。 |
昇竜 のぼりりゅう |
松平菖翁 | 江戸末期 1853年以前 | 中 | 花容:八重中輪、花径:14cm 花色:薄紫地に濃い紫の脈色 弁質が厚く、裏側は濃青がかかる紫色。竜が昇天するように3度首をふるとの言い伝えがある珍しい花。 |
三笠山・みかさやま | 松平菖翁 | 1856以前 | 晩 | 花容:三英中輪 花色:藤色地にわずか紫散り絞り |
都の巽 みやこのたつみ |
松平菖翁 | 江戸末期 安政3 1856年以前 | 中 | 花容:六英平咲き中輪花、花径:16cm 花色:薄藤紫の砂小絞り、中央に青味を感じ、そこに淡色の筋が入り周縁は薄紅となります。当時の人々の遊び心が感じられる色合いです。 |
連城の璧 れんじょうのたま |
松平菖翁 | 江戸末期 安政3 1856年以前 | 花容:六英平咲き中輪花、花径:14cm 花色:薄い藤紫色 花は開花直後は名のように玉咲きですが、開花すると花弁の縁が細かくうねるためさざなみと称して鑑賞しています |